ソフトバンクG 純利益5兆円の正体 — 兆円赤字からの大逆転、ポートフォリオの中身と将来予測を解剖する

この記事でわかること - 純利益5兆円(日本企業の過去最高益)の中身と、その92%の正体 - なぜソフトバンクGの利益はこれほど乱高下するのか - 現在のポートフォリオ(Arm・OpenAI・ビジョンファンド・通信)の全体像 - OpenAI IPO・Stargate を含む将来予測と、3つのリスク - 投資家として何を見ればいいか
ソフトバンクグループ(9984、以下SBG)が、2026年3月期に純利益5兆22億円を叩き出した。前期比約4.3倍、日本企業の過去最高益だ。
だが少し前まで、この会社は兆円単位の赤字を出していた。なぜここまで乱高下するのか。そして今の5兆円の利益は、本当に「実力」なのか——。
本記事は、SBG の現状を数字・ポートフォリオ・将来予測の3軸で深掘りする勉強記事だ。なお、「そもそも SBG は投資持株会社で NAV で見る」という基礎は ソフトバンクG(9984)はなぜ急騰したのか — 投資持株会社の読み方 で解説しているので、あわせて読むと理解が深まる。
⚠️ 株価・業績数値は執筆時点の情報。市場環境で変動するため、最新値は各自で確認のこと。
1. 数字で見る大逆転 — 純利益5兆円、日本企業の過去最高
まず2026年3月期(通期)の数字を並べる。
- 売上高 7兆7,987億円(前期比 +7.7%、初の7兆円超)
- 純利益 5兆22億円(前期比 +333.7%、約4.3倍)= 日本企業の過去最高益
- 投資利益 7兆2,865億円(前期の約2倍)
- NAV(時価純資産)32.4兆円
トヨタを抑えて日本企業の純利益トップに立った。「赤字を垂れ流していた会社が、日本一の利益を出す会社になった」——この振れ幅こそ、SBG という会社の本質を理解する入口だ。
2. 利益の92%の正体 — それは「OpenAIの含み益」
ここが最重要ポイント。5兆円の利益の大半は、本業の儲けではない。
- 投資利益 7兆2,865億円のうち、OpenAI への出資による投資利益が6兆7,304億円
- つまり利益の92%超が、OpenAIの"含み益"(=まだ売っていない株式の評価上昇)
【概念解説】含み益(未実現利益)とは 保有している株式の評価額が上がった分を利益として計上したもの。実際に売って現金化したわけではない。評価額が下がれば、同じ仕組みで含み損(赤字)に逆戻りする。
OpenAI は未上場企業だ。その企業価値は市場価格ではなく評価モデルで算定される。評価が上がれば SBG は巨額の利益を計上し、下がれば巨額の損失を計上する。つまり今の5兆円は「紙の上の利益」であり、OpenAI の評価次第で来期は様変わりしうる。
これは「すごい」と同時に「危うい」。SBG の利益が乱高下する理由は、まさにここにある。
3. なぜ乱高下するのか — ビジョンファンドの歴史
SBG の利益の振れ幅を作ってきた主役が、投資ファンドソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)だ。
- 世界中のスタートアップに大型投資を行い、ある時期にはポートフォリオ公正価値が約1,540億ドルに達した
- しかし市場環境の悪化で評価が反転し、1四半期で1兆円超の赤字を計上する局面もあった(投資損失だけで1.8兆円規模の四半期も)
- その後、AIブームを背景に再評価が進み、SVF1の累計利益は+242億ドル、SVF2は+218億ドルまで回復、ファンド事業が黒字評価の局面に入った
要するに SBG は、保有株の評価が上がれば巨額黒字、下がれば巨額赤字を繰り返してきた。アリババ → ビジョンファンド → Arm → OpenAI と主役を乗り換えながら、その都度大きく振れてきたのだ。
今の「過去最高益」も、この振れ幅の上向きのピーク局面にいる、と捉えるのが冷静な見方だ。
画像: Pexels
4. 現在のポートフォリオを把握する — NAV 32.4兆円の中身
「SBG株を買う=SBGのポートフォリオを間接的に買う」。では、いまの中身は何か。NAV 32.4兆円の主要構成を整理する。
① Arm(半導体設計)— NAVの柱
- SBG が完全希薄化ベースで約9割を保有
- AI 向け設計需要で Arm 単体も好調(2026年1〜3月期 純利益 +49%)
- NAV の最大級の柱であり、Arm 株価の動きが SBG の価値を大きく左右する
- ※ Arm は米ナスダック上場(ティッカー ARM)。日本の証券口座からは直接は買いにくく、SBG経由で間接的に持つ形が一般的
② OpenAI(生成AI)— 含み益の主役
- 巨額出資により、いまや利益の92%を生む存在
- 未上場のため評価の変動が大きい。上場(IPO)すれば価値が"見える化"され、含み益が現金化に近づく
③ ビジョンファンド(SVF1・SVF2)— 再評価局面
- 世界中のスタートアップに分散投資。AI関連の比率を高めている
- 累計損益が黒字に転じ、「失敗投資」のイメージから再評価フェーズへ
④ 通信事業(安定収益源)
- ソフトバンク(9434) — 国内通信子会社(SBGとは別の上場会社)。安定したキャッシュフロー
- PayPay などの金融・決済事業
⑤ その他の保有株
- T-Mobile US 株、ドイツテレコム株など
- かつての主役だったアリババ株は、ほぼ売却済み
ポイントは、Arm と OpenAI への集中度が非常に高いこと。良くも悪くも「AI への一点集中ベット」になっているのが現在のSBGだ。
5. 【概念解説】なぜ会計利益がこれほど揺れるのか
【概念解説】投資持株会社の利益の振れ方 SBG のような投資会社は、保有する株式の評価額の増減がそのまま会計上の利益・損失になる。 - 保有先の評価UP → 巨額の「投資利益」 - 保有先の評価DOWN → 巨額の「投資損失」 事業会社のように「売上−コスト」で利益が決まるのではなく、ポートフォリオの時価で利益が決まる。
だから SBG の「純利益5兆円」を、トヨタの「純利益◯兆円」と同じ感覚で比べてはいけない。トヨタの利益は車を売った実需の儲けだが、SBG の利益の大半は含み益という"評価の産物"だ。
この違いを理解することが、SBG を読み解く最大のカギになる(詳しくは 投資持株会社の読み方 を参照)。
6. 将来予測 — 3つの成長エンジンと3つのリスク
では、これからどうなるのか。冷静に「上振れ要因」と「下振れ要因」を並べる。
成長エンジン(上振れ要因)
- OpenAI の IPO — 上場すれば含み益が"見える化"され、現金化の道が開ける。NAVのディスカウント縮小も期待できる
- Stargate(AIインフラ) — OpenAI らと進める巨大AIインフラ計画(4年で総額5,000億ドル規模)。SBGが財務面を主導
- Arm の成長 + ASI 構想 — AI設計需要でArmが伸び、孫氏は「ASI(人工超知能)」への長期ビジョンを掲げて AI インフラへ巨額投資を継続
リスク(下振れ要因)
- OpenAI 一極集中 — 利益の92%が単一の未上場企業の含み益。OpenAIの評価が下がれば、利益は一気に逆回転する
- 財務の重さ — 有利子負債は過去最大の12兆円超。追加投資と買収で借入が膨張し、営業キャッシュフローは赤字転落(税金・利息の支払い増)
- 未上場株評価の不確実性 — OpenAI・SVF保有先の多くが未上場。評価額は市場価格ではなくモデル算定で、振れやすい
「当たれば巨大、外せば巨額損失」という SBG の本質は、最高益の今もまったく変わっていない。
7. 投資家としての着眼点 — 何を見るか
SBG を追うなら、決算ごとに次の5つを確認したい。
- NAV(時価純資産)の推移 — SBGの本当の価値
- Arm の株価と業績 — NAVの柱、SBG株とほぼ連動
- OpenAI の評価額・IPO 進展 — 利益の92%を生む存在の動向
- LTV と有利子負債 — 借金の重さ(過去最大12兆円超)。財務の安全弁
- 営業キャッシュフロー — 赤字が続くか、改善するか
タイプ別の構え方:
- AIテーマに乗りたい人 — SBGはArm+OpenAIへの"レバレッジ的"な乗り方。上昇も下落も増幅される前提で
- 長期投資家 — NAV成長と OpenAI IPO を中長期で取りに行く。ただし含み益依存のボラティリティは覚悟
- 配当・安定狙い — SBGはボラが大きくインカム向きではない。安定収益が欲しいなら通信子会社 ソフトバンク(9434) の方が性格は近い
個別銘柄の業績・スコアはかぶHUNT の銘柄ページで確認できる。
まとめ
- SBGは純利益5兆22億円で日本企業の過去最高益を更新。だが利益の92%はOpenAIの含み益(紙の上の評価益)
- 利益が乱高下するのは、保有株の評価増減がそのまま会計利益になる投資持株会社の宿命
- 現在のポートフォリオは Arm(約9割保有)と OpenAI への一点集中が際立つ。通信・SVF・T-Mobile株などが脇を固める
- 将来の上振れは OpenAI IPO・Stargate・ASI構想、下振れは OpenAI一極集中・有利子負債12兆円・営業CF赤字
- 「当たれば巨大、外せば巨額損失」という本質は、最高益の今も不変
SBG株を持つことは、孫正義のAIへの大勝負に、レバレッジをかけて相乗りすること。その意味を、数字とポートフォリオで理解したうえで向き合いたい。
よくある質問(FAQ)
Q1. ソフトバンクGの純利益5兆円はすごいことですか? A. 金額としては日本企業の過去最高益で、トヨタを上回る規模です。ただし利益の92%超(約6.7兆円)はOpenAIへの出資による"含み益"(未実現の評価益)で、本業の儲けではありません。OpenAIの評価が下がれば同じ仕組みで損失に逆戻りする性質のため、トヨタのような実需の利益とは分けて理解する必要があります。
Q2. なぜソフトバンクGの利益は乱高下するのですか? A. SBGは投資持株会社で、保有する株式の評価額の増減がそのまま会計上の利益・損失になるためです。評価が上がれば巨額黒字、下がれば巨額赤字。実際、ビジョンファンドは1四半期で1兆円超の赤字を出した局面もあれば、累計黒字に転じた局面もあります。
Q3. 現在のポートフォリオの中身は何ですか? A. 主力は①Arm(半導体設計、完全希薄化ベースで約9割保有、NAVの柱)、②OpenAI(含み益の主役)、③ビジョンファンド(SVF1・SVF2、再評価局面)、④通信事業(ソフトバンク9434、PayPay)、⑤T-Mobile・ドイツテレコム株などです。かつての主役アリババ株はほぼ売却済みで、現在はArmとOpenAIへの集中度が高くなっています。
Q4. ソフトバンクGの将来はどうなりますか? A. 上振れ要因はOpenAIのIPO(含み益の現金化)、Stargate(4年5,000億ドルのAIインフラ計画)、Arm成長とASI構想です。下振れ要因はOpenAI一極集中(利益の92%)、過去最大12兆円超の有利子負債、営業キャッシュフローの赤字です。「当たれば巨大、外せば巨額損失」の本質は変わりません。
Q5. ソフトバンクGに投資する際の注意点は? A. NAV・Arm株価・OpenAIの評価/IPO進展・LTV(有利子負債)・営業キャッシュフローの5つを確認しましょう。値動きが大きいため、AIテーマへの"レバレッジ的な乗り方"だと割り切り、生活資金での集中投資は避けるのが現実的です。安定収益が欲しい場合は通信子会社のソフトバンク(9434)の方が性格が近いです。
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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、将来の運用成果を保証するものではありません。
最終更新: 2026-05-25 執筆: かぶHUNT編集部